信頼関係に基づいて託すので、成年後見制度における「後見監督人」のように、必ずしも第三者の視点からチェック機能を持たせる必要はありません。
老親が元気なうち(目の黒いうち)は、老親自ら、子による財産管理状況(信託事務の遂行)をチェックできますので、財産のオーナーとして(あるいは親として)、直接希望・要望を伝え、場合によっては指導をすることができます。
しかし、月日の経過とともに、認知症の発症等でいずれ受益者自らチェックできなくなる時が来るかもしれません。
その時に、受託者となった子が当初の老親の“想い”や信託目的に沿った信託事務の遂行ができているかどうか、それをチェックする機能が働かなくなります。
それを補う機能(立場)として、「信託監督人」を置くことができます。
受託者は、受益者及び信託監督人に対して、定期的に財産管理状況を報告したり、重要な財産の処分(不動産の売却、買い換え、建物の解体・建替え、銀行借入れなど)をするときに同意をもらうような形にするのが一般的です。
もし受益者の判断能力が低下・喪失している場合は、信託監督人がその役割を一手に担うことになります。
信託監督人の資格は、法律上の制限はありませんが(未成年者、成年被後見人、被保佐人を除く;信託法第137条が準用する第124条)、受託者の兄弟姉妹等がなることはあまりお勧めしておりません。
感情的な部分を排除し、客観的・中立的な立場から受託者の業務をチェックすることを重視すると、家族信託に精通した専門職(司法書士、行政書士、弁護士、税理士等。但し、士業である必要はない)が
担うことをお勧めしています。
また、信託監督人の果たす役割として、財産管理のプロではない受託者が、財産の管理・運用・処分について迷ったり悩んだりする際の相談相手としての機能も期待できるといえます。
家族信託の仕組みの設計においては、信託監督人を置くかどうかも含め、長期にわたる財産管理(設計によっては世代を超えた財産管理と資産承継)を実現するためのベター・ベストな形を追求していくことが重要です。
世間に出回っている信託契約書のひな型に当事者情報を当てはめて作れるものではないことは、改めてご理解頂きたいです。