7. 不動産売却

売却と委任状

親本人に家や土地を売りたい意思があっても、療養中などの理由で、実際の手続きができない状況は、高齢になればなるほど起こりうることです。
家を売って、介護費用に充てたいケースもよくあります。

親の代理として不動産を売るには、親本人の意思があるのか確認するために、親が署名押印した「委任状」と印鑑証明を添付して、買主と売買契約するのが普通です。

親に代わって売る子(代理人)が、本人と同じ権限を持っているのか、一部の権限しか持っていないのかは、委任状の内容次第となります。
子が親を代理するなら、全権委任(すべて子に任せてしまうこと)が多いでしょう。

しかし、買主にとっては、本人からの委任状があっても、偽造の疑いはなくならず、親本人に売却の意思を確認したいと言われるかもしれません。
また、親子関係が確かであるか、戸籍や本人証明を当然に確認されます。

親子だからと無条件に委任状が信用されるようなことはなく、万が一にも騙されたくない買主側は、かなり慎重に手続きを進めようとするはずです。
決済の場を仕切り、登記手続きを行う司法書士には、取引や登記の公平性・確実性を担保するため、当事者本人の意思を確認する義務を負っています。
したがって、親を代理する子と買主が共謀して、司法書士を介さずに取引するケースを除けば、親に無断で売ろうとしても、司法書士が歯止めになります。

また、本人の意思が反映されず権限のない代理(無権代理)でされた契約は、本人が追認(後から認めること)しなければ、本人に効力が発生しません。
さらに、子が代理権を持っていないと知った買主は、契約を取り消すことができます。

したがって、子が勝手に親の家や土地を売ろうとして、仮に売買契約まで結ばれたとしても、決済の段階で司法書士が親に確認すれば売却の意思がないと気付きますし、事実を知って危険を感じた買主は契約の取消しを求めるので、正当な手続きが必要です。

不動産売却と成年後見

親の不動産を売却したいと考えても、親にすでに判断能力がなく、契約締結能力がないという場合は、法定後見制度の後見類型(成年後見制度)を利用するしかありません。

成年後見人が、本人の不動産(ここでは、居住用不動産を言います。)を売却処分するには、家庭裁判所の許可が必要です。許可を得ずにした居住用不動産の処分は無効です。

本人の生活資金や入院費などの後見費用をねん出するために財産を売却、処分する必要が生ずることもあります。居住用不動産にはすでに施設に入所している場合のかつての住居も含まれます。住んでいた借家を解約する際にも許可が必要ですし、リバースモーゲージ(老後において、自宅に住み続けたまま、自宅を担保に借入れを行い、返済は死亡時に自宅を換価して一括して行うという住宅ローンの一種)の利用にも許可が必要になります。

ちなみに、非居住用不動産は、その処分に際しては、基本的に家庭裁判所の許可は不要ですが、念のために、家庭裁判所に意見を求める方が望ましいです。

いずれの場合も、後見監督人が選任されているときは、後見監督人の同意を得る必要があります。

不動産売却と家族信託

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